Page×3

読書感想など

孤独な戦い『地上最後の刑事』/ベン H ウィンタース

 f:id:dazzle223:20150421235254p:plain

 

 

地上最後の刑事 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

著:ベン H ウィンタース

ファストフード店のトイレで死体で発見された男性は、未来を悲観して自殺したのだと思われた。半年後、小惑星が地球に衝突して人類は壊滅すると予測されているのだ。しかし新人刑事パレスは、死者の衣類の中で首を吊ったベルトだけが高級品だと気づき、他殺を疑う。同僚たちに呆れられながらも彼は地道な捜査をはじめる。世界はもうすぐなくなるというのに…なぜ捜査をつづけるのか?そう自らに問いつつも粛々と職務をまっとうしようとする刑事を描くアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀ペイパーバック賞受賞作!

 

 

 
地球へ途轍もなく巨大な惑星がせまっており、回避も破壊も不可能。人類が絶滅するかもしれないという状況に陥った時に人はどうするだろうか。仕事を辞めて長年あたためてきた”やりたいことリスト”を潰していく人、過去の因縁に決着をつけに行く人、ドラッグに手を染め毎晩酒を飲みパーティに明け暮れる人、自ら死を受け入れる人、神に祈りを捧げる人、陰謀論を唱える人、ただひたすら自分の職務を全うする人。
 
首吊り自殺が続く町でまた一人首を括った。
他の刑事や検察が自殺と断定するなか、細部の不審点に着目して殺人事件として調査を進める主人公ヘンリー・パレス刑事。
 
与えられた仕事を正面から受け止め、この状況でも決して他の刑事のように迷うこともなく職務を全うする姿には好感が持てる。半年後には惑星が落ちてくる世界で周りの人々や環境は刻一刻と、それも確実に崩れていく。そんな中でもいつも通りの生活を送り、淡々と事件解決のためには走り回るパレス刑事。他人から見れば、『なぜそんなことをするんだ。おかしいぞお前』と言われる。
 
「変わったひとね、パレス刑事」
「みんなそういうよ」
 
他人から見ればおかしいことかもしれないが、自分の視点からするとそれはごく自然なこと。笑い者にされようがのけ者になろうが自分という個を守ることは何もおかしくない。それはパレス刑事にかかわらず出てくる人々、誰にでも当てはまる。
 
自分を守るために、仕事を辞め、仕事を続け、薬にはしり、自らを殺し、祈りを捧げる。
 
ミステリーとしてはアリバイ工作やトリックというものは見受けられない。
足を運びひたすら聞き込みの連続。ネットを使おうにも通信は不安定でろくに携帯をかけることもできない。
科学捜査も協力者も見込めず、ただひたすら自分一人の戦い。相手に視点に立って、何を感じ、何を思い、どのように行動したのか思考する。
 
思考を止めるな常に考え自らを信じろ。
 
 
追記:
続編のカウントダウンシティでは文明がどんどん崩れ去っていく。
そして捜査方法もよりローカルになって、RGPのおつかいイベントの様になん箇所も地道に場所を移動して、住民の話を聞いて、ダンジョンを抜けてやっとアイテムを入手した時と似ている。