悪魔を讃えよ!!!「巨匠とマルガリータ」
巨匠とマルガリータ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-5)
著:ミハイル・A・ブルガーコフ
究極の奇想小説と銘打ってる本書。
悪魔の出てくる小説と聞いて、安直に悪魔に対抗する組織を描くアクション小説なんだろうな、と思い受けべ読み始めたら自分の範疇からはみ出しまくり予想が外れに外れる小説だった。奇想小説と銘打っているものの実際は現実的。ファンタジーの世界や中世の悪魔ではなく、きちんとした現実の世界にポンっと悪魔が現れる。
悪魔と関わった者はほとんどの場合、気が狂い精神病院に入れられるか、ひどい目にあわされる。彼らの通った道の後には狂乱、混乱、事件、火、銃弾、右往左往する人間たち、と草木も残さず、何もかもが騒がしく悪魔めいている。しかしながら如何にもこうにも彼らを「憎らしい」と思ったり「早くどうにかしてくれ」といった思いには至らず、どこまでも突き抜けていて気持ちが良い。ユーモアがあり、軽口で飄々としてどこか紳士的な彼らに好意を持ってしまう。
闇に紛れて何か悪事を働くというよりも真昼間でも何も恐れず堂々と歩き回り(人間の姿をしてる悪魔もいますが、猫の姿でしかも口もきけて二本足で歩き回る悪魔もいる)人々を口車に乗せて騙していく。(中にはもっとひどい目にあう人も…)悪魔というこて概念にとらわれず、どこまでもユーモラスな奴らだ。
とくに気に入ってるのは猫の姿をした「ベゲモード」。下記は舞踏会に出席する際に着替えをしたシーンの抜粋
猫の首には燕尾服用の白い蝶ネクタイが結ばれ、胸には真珠会ででききた女性用の双眼鏡が革紐で吊るされていた。そのうえ、口ひげには金粉がまかれていた。
で、そのあとにこれがどんなにおしゃれな格好なのか説明するのがたまらなく良い。これは個人的に自分の美学を説明するシーンが好きなのとそれが猫(重要)の姿をした悪魔な点がとても好きなんだ。
えーっと悪魔ばかりにスポットあててばかりなので主人公とそのヒロインの話へ。
ある種の悪魔の一番の被害者であり、救済し、救済された者達。正直なところ彼らが一番掴みにくかった。どこまでも巻き込まれ役な主人公は小説家であり、精神病棟の住人。荒唐無稽に思われた悪魔達の闊歩は彼らにつながっていく。ヒロイン(?)は一途な思いを通すという点ではスタンダードなヒロイン役ではあるが、途中全裸になります。以上。
悪魔や主人公以外の端々に出てくる登場人物はどれも個性的であるがことごとく悪魔の歯牙にかかってしまい、恐ろしい目に遭ってしまう。中には主人公以上に個性的な登場人物であるにもかかわらず、ちょい役だったりするので贅沢だ。
また、キリスト教に関わる人物が多数登場してくるので、そちら方面の知識はほぼ皆無なので調べながらであるが読み進めた。
「巨匠とマルガリータ」は作者の生前発表されることがなく、また他の本も発禁された。
作中でも主人公の「巨匠」が書いた小説を出版社に持っていくが、発表されることがなく、それどころか多くの新聞で「キリストを讃える小説」として批判されてしまう。それもあり一度小説を燃やしてしまうのだが、ある出来事からもう一度再び日の目を浴びることになる。死後発売された本書と、本書の内容が見事に一致しているのにただただ驚いてしまう。多分その当時のソ連を皮肉っているようなシーンもあるのだろうけどもその知識はないので、そこまで読み解くことができなかった。
なんとかストーリーの大枠を理解したと思い、展開を予想するのだが、気がつけばアッチコッチへ縦横無尽に予想外の展開に進んで行く。それを理解しようと脳みそが騒がしくとても心地いい読書体験でした。
人に勧めにくいかもしれないけど一章がそこまで長くもないので、1日1章よめば1ヶ月弱で読み切れる(はず)
「岩波文庫」さんが5月出してくれるそうなんで、こちらをまた買います。ありがとう岩波さん。
あとで同じ作者の「悪魔物語・運命の卵」も買います。(内容は知らないが、作者買いをする)
「 犬の心臓」も買う。
- 作者: ミハイル・A・ブルガーコフ,水野忠夫
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2012/01/24
- メディア: 単行本
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キャラクター性だけに着目すると普段から漫画を読んでる人はスッと受け入れることができると思う。