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読書感想など

フィクションに含まれる現実『オールドテロリスト』/村上龍

 

オールド・テロリスト

オールド・テロリスト

 

 

あらすじ

 
失業から妻と別れ安アパートに住んでいるフリージャーナリストのセキグチ。風俗やルポなど記事を書いているが生活は困窮している。そんなある日元上司からの連絡でNHKでテロを起こすというタレコミがあり実際実際に向かったところにテロが起きてしまった。その後もテロの現場に立ち会い
、キニシスギオと呼ばれるグループが今回のテロを起こしていることが判明する。カツラギと呼ばれる精神不安定な女性や老人たちに出会うことでその目的や手口を知ることとなる…
 

 

フィクションに含まれる現実

死にたがっている若者を利用してその影に隠れている老人達。マスメディアを憎み、目的の為には手段を選ばずに人を殺すことに週巡がない。とても恐ろしく、それが現実に起きていることも事実である。
 
日本でテロが起きる、しかもその犯人は老人。こんな展開はありえない、と鼻で笑う事でフィクションであると目を背けることもできるが、リアリティがあるように思えてしょうがない。
誰が何を起こすのか分からない、何を考えているのか計り知れない世の中では起こり得るのではないかと考えると背中がヒヤリとする。
 
本書内で書かれている「経済的に困窮している若者は死にたがっているのと同じことだ」といった若者論は大手を振って賛成は出来ないが、よくよく考えれば何十万人もいる若者の心の内を知ることも出来ないのでそのような人間がしてもおかしくはない。それを利用することもありえるのかもしれない。
 
指示待ち人間という指示が無いと動けない人がいる、指示されることに満足して自分で動けない人間がアレをして来いと言われたらテロを起こしてしまうかもしれない。
 
非凡な人間は少なからず、収入が高い人間に対して嫉妬心が生まれることがある。それを刺激されたらどうだろうか?起こしてしまう人間はいるはずだ。