Page×3

読書感想など

『クローム襲撃』/ウィリアム・ギブソン

 

クローム襲撃 (ハヤカワ文庫SF)

クローム襲撃 (ハヤカワ文庫SF)

 

 

ニューロマンサー』ウィリアム・ギブソンの短編集

 

dazzle223.hatenablog.com

 

第一印象として「読みにくい」に一言に尽きる

ニューロマンサーの時と同じなのだが、なぜそうなったのかという原因をはっきりと描写をしない。後々から出てくるキーワードやセリフから「たぶんこういった理由なんだろう」と察して読み進めていく。何度か読み直さないと自分には何が起きているのかさっぱりな話もあった。

 

その原因となっているのは独特な言い回し、造語と説明と描写と心象などを省いた進行。起きた現象のみをテキストに起こされ、その間をバッサリと切られている。それはあえて説明しない方法を取っているのだと思われる。初対面の人から身内にしか伝わらない話を聞かされている様で、なんとなくわかった気でいる。
 
しかしながら後半になるにつれて読みやすくなったのか、慣れてしまったのかだんだんと何を言っているのか理解できる様になってきた。ニュー・ローズ・ホテル以降はどれも読みやすくなり面白い。
 

世界はつながっている

短編集ではどれもシチュレーション自体は違うものの、同じ世界観で起きていることを時代や国を変えて一つの平行世界を切り取っている様だ。(シリーズ物として刊行したのか不明なため、完全に妄想である)
 
どれもこれも希望とはかけ離れた話でありながら心の琴線に触れ、もの哀しく孤独な気分に陥る。電子、電脳、機械、コンピュータ。おおよそ血の通っていない世界であがいている人間たち。それはとても美しくとても脆い存在。物語の最後には冬の町を一人歩いている様な心が冷え切った気分になってしまう。圧倒的な世界観の構成が全面出ているようで根本は人間が描かれている。機械的で感情がないように思える登場人物たち、それらはだたの駒ではなく世界の中で生きている血の通った人間であることは間違いない。そして本当はそれを描きたかったのでないか。世界を動かすの世界ではなくいつでも人間の感情と理性、男と女なのだから。
 
シーンは度々飛んでしまい、伸びきったテレビテープのような文体ではあるが今思えばとても脳内でイメージしやすい。