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読書感想など

殺しの先に待つものは『シスターズ・ブラザーズ』/パトリック・デウィット

 

シスターズ・ブラザーズ (創元推理文庫)

シスターズ・ブラザーズ (創元推理文庫)

 

 

あらすじ

兄のチャーリーは冷血で目的のためには手段を選ばず殺し、女を抱き、金を奪う。弟のイーライは普段は心優しいが切れると手がつけられなくなる。凄腕の殺し屋のシステーズ兄弟は提督と呼ばれているボスに依頼され、ある山師を消しにサンフランシスコへと向かう。旅の途中に立ち寄った街、道中に出会う人々は兄弟に負けず劣らず誰も信用出来ず一癖も二癖もある人ばかり。兄弟は無事に山師を消すことは出来るのか……

 

繰り返される銃撃戦、かと思いきや

主人公がピンチに陥っていたとしても「どうやってこのピンチを切り抜けるんだ」という手に汗握るという感じではなかった。というのも、あらすじから想像する様な激しい戦闘シーンが話の中心となっている訳ではなく(一応戦闘や血なまぐさい描写はあります)語り手の弟は誰かを傷つける事に非情になれず提督の仕事から足を洗いたがっており、その心情に重なる様に詩的にもの悲しい雰囲気が漂っている。
 
泣き続ける男、黄金を探す男、仲間を失った子供、殺されたインディアン、片目を失った馬、不気味な老女、犬に毒を与え殺した少女、ホテルの女、売春婦たち等の道中に出会う人間や出来事は今まで手に染めてきた事に対する示唆や啓示、清算の様に感じた。銃を撃ちまくる血みどろのエンターテイメント的な物語だと思っていたので、意外にも観念的で淡々とした物語だったので少し戸惑いはあった。
 
物語の始まりから終わりまで与える事はできず、関わるものから奪い取ることしかできない二人。それはまた二人も同じに奪われ続けるが、最後には…
 

読みやすい文体

海外文学で読んでいると突発的な行動で「どうしてその行動をしたんだ?」という疑問が浮かぶ時があるが、本書では前後の関係をちゃんと繋いでいるので違和感を感じずに読み進めることができた。
翻訳は茂木 健さん。偶然にも以前感想を書いた『完璧な夏の日』の翻訳も手がけてました。
 

 

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展開は早く次々とシーンは変わりグダクダと引きずることなくストーリーは進んで行くのでサクサク読むことができます。