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読書感想など

大人たちの可笑しい青春『笑う招き猫』/山本幸久

 

笑う招き猫 (集英社文庫)

笑う招き猫 (集英社文庫)

 

 

あらすじ

桃餐プロダクションの所属する駆け出しの女の漫才コンビ『アカコとヒトミ』は初めてのライブで大失敗をしてしまう、しかも打ち上げの席でセクハラをする先輩を殴り倒してレットバロンと名付けられた自転車でギコギコ逃げ出してしまう。お金も男をいないさえない二人だけど大舞台に立つことを夢見ている。

 

 

進むべき道を模索する二人

ライブの回数を重ねるに連れて笑いも取れるようになり、サインを欲しがるファンも現れたり順調そうに見えた二人だった。しかしテレビ番組をきっかけにプロとしてのお笑いか、好きなことをするお笑いかという葛藤や、女としての自分、友情や嫉妬が二人の間に溝が生まれた。

 

人物描写の妙さ

登場する芸人には、トリオを解散してピンで活躍するが中々上手くいかな輩芸人や、漫才やコントの様な掛け合いで笑いを取れず体を張った笑いでテレビ出演する芸人など何処かで見たことある様な人たちばかり。

解説のラーメンズ片桐仁さんが書かれている様に元ネタとなった人が多数いる様だ。(大女のヒトミは賢太郎さんで、豆タンクのアカコは自身をモデルにしているらしい)だからなのか「登場する一人一人がとてもリアリティがあって、脳内では既に特定の芸人さんでイメージがついてしまっている。

 

物語は『アカコとヒトミ』の成長期であるが、一方で他の芸人たちの挫折や迷いの物語の側面があり、十代をとっくの昔に過ぎ去った大人たちの真っ当な青春小説になっている。