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読書感想など

「少し不思議」な短編集。『たんぽぽ娘』/ロバート・F・ヤング

 

 

 
ロバート・F・ヤング自体初めてだったのですが、題名にもなっている代表作『たんぽぽ娘』をはじめ、『特別列車がおくれた日』『河を下る旅』『神風』など13編の短編・中篇の小説が収録されています。それはどれもとっつきやすくスラスラ読むことができました。

 


そぎ落とされたシンプルさ

アイディアは小難しさはなく短編らしいそぎ落とされ、シンプルでストレート。SFというよりも藤子・F・不二雄的な「少し不思議」に近い印象。だからこそハッとさせる様なエンディングが多かったです。

ボーイ・ミーツ・ガールを題材とした作品がいくつか収録されており、青春小説の様な甘酸っぱいではなく、自然体で肩を張らない爽やかさと、触れば崩れてしまう脆さが含まれています。読んでいると幸福な気分、逆に沈んでしまう作品もありました。


特に気に入った作品

各短編で読了後に特に思い出してしまうのでは『神風』でした。
たんぽぽ娘』ももちろん良かったのですが、今回は『神風』を推したいです。
 
『神風』あらすじ
命を捨てて敵の戦艦へカミカゼを命じられた主人公。敵地へ向う途中、彼の乗る戦闘機に爆弾に生まれてきた女性が転送されてきた…
 
カミカゼ」は言わずもがな戦時中、日本軍が行った戦術の一つ。
本作の主人公は軍から戦艦へ特攻をかけように命令され、一人戦闘機に乗り敵地へ向かいます。しかし戦艦へ向かい途中、「爆弾として生まれてきた女性」が転送されて来た。主人公同様に彼女もつい一時間前に自分が爆弾として生まれてきたことを知らせれます。
同じ境遇に立つ男と女は互いに邂逅する姿、そしてその最後にを読み終わった後は脱力してしばらく抜け切れませんせした。


終わりに

収録作品自体もとても良いのですが、解説がまた面白い。作者の略歴とともにその当時の小説というジャンルが小さくなっていったのか経緯が書かれていたり。「ロバートの長編はこわれている」と書かれていましたが、逆に読んでみたくなりました。


雑談

同じSFジャンルの短編集で『伊藤計劃トリビュート』を最近読んだのですが、たんぽぽ娘』を読んでから振り返ってみれば地球レベルで収まっている作品が多かったなと、ふと思ってしまいました。
書かれた時代、作者が違うので当たり前だとは思うが、『たんぽぽ娘』はそれとはベクトルが全く違う。