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読書感想など

途絶えた望み『絶深海のソラリス』/らきるち

[まとめ買い] 絶深海のソラリス

あらすじ

世界中が水害によって沈んだ世界。新しい人間、人種の一種として<水使い>と呼ばれる特殊能力者が生まれる。<水使い>を育成するアカデミーの教官に着任した主人公は幼馴染や元同級生、個性的な生徒と出会い絆を深めていく。

 

深海×絶望

<水使い>のアカデミーでの日常は穏やかで、いわゆるアニメやライトノベル的なほのぼのとした日常を送りながら主人公は女性たちと絆を深めていく。

前半では畳み掛けるように幼馴染やツンデレ金髪、色黒巨乳、片言中国人などお決まりの様なキャラクター紹介を終え、少しずつ主人公へ馴染んでいくシーンが続いていく。それにより登場人物に好感を持ち、少なからず気に入ったキャラクターに愛着を持っていく。

しかし中盤から自体は一転する。

簡単に言って仕舞えばパニックムービー的な展開だ。意地の悪い事に映画では感情移入を出来ないまま冒頭で犠牲者がでるが、本書ではキャラクターに愛着を持ってから絶望がやってくる。大前提のお約束ごとを破り、畳み掛けるような展開が彼らに襲いかかる。主人公ならびに読者に絶望を与える事に成功したと言える。

ただ、その絶望ばかりに目を奪われるだけではもったいない。<水使い>や水害によって沈んだ世界、国家同士の体制図など設定がとても面白い。まだ明かされていな設定もあるので想像の域を超えないが、膨らませていくとSF小説として一般紙で出版してもいいレベルになっている。

一巻を読み終えた後にすぐに二巻目を読み始めた(kndleセール中だったのですぐに購入)。結果としては続編ものとして、また単独でもとても面白い。絶望に落ちた主人公の贖罪と再生にスポットを当てて全編通して重苦しい雰囲気が漂っている。二巻ではまだ世界全体としては解決に至っていない。だが個々の問題としては一つの答えを見つけたので物語としては二巻で完結しても問題ない形で収まっている。

 

雑談

ライトノベルでは普通なのかもしれないが、描写や設定をもう少し詳しく説明して欲しいと思ってしまった。世界観が普通の日常とはかけ離れてしまった未来の話なので、ある程度のリアリティを持たせることでよりいっそ物語に入れ込むことができると思う。