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読書感想など

何度も読み返したくなる本10選

ツイッターやブログで「#本棚の10冊で自分を表現する」が話題になり、幾つかブログを拝見して読みたいリストに追加した。それからすっかり時期がズレてしまったが「自分ならどの本だろう」と本棚や今まで読んできた本を振り返ってみた。
 
ただ「自分を表現する」というニュアンスにピンと来なかったので単純に自分が好きで何度か読み返している本を選んでみました。
 
  1. カラフル/森絵都
  2. 世界の終わりとハードボイルドワンダーランド/村上春樹
  3. ベルカ、吠えないのか/古川日出男
  4. 世界音痴/穂村弘
  5. ハーモニー/伊藤 計劃
  6. そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります/川上未映子
  7. 燃える剣/司馬遼太郎
  8. ネガティブハッピーチェーンソーエッヂ/滝本竜彦
  9. 魍魎の匣/京極夏彦
  10. グラスホッパー/伊坂幸太郎
 
 
カラフル/森絵都
罪を犯した魂が輪廻のサイクルから外された僕。天使の抽選にあたりもう一度チャンスを得ることとなる。その条件は自殺した中学生の体にホームステイをしながら生前の罪を思い出すこと。家族や友達との関係性や現実に向き合う中学生の姿がリアルが描かれ、何度読んでも色あせない。
読み終わる直前に先に読んでたクラスメイトにネタバレされたのも含めいい思い出。
カラフル

カラフル

 

 

 
世界の終わりとハードボイルドワンダーランド/村上春樹
初めて読んだ村上春樹本。この本を読んでから他の作品に手を出さなかった理由を思い出せないが(他の著作は今年になって読み始めた)夢中になって読み、何度も読み返している。メルヘンで寓話的な世界観と、RPGのようなハードボイルドな世界観が交互に語られる。単体としても完成されている世界観はどのように繋がるのか? 両極端な組み合わせの面白さに加えて謎解き要素が面白い。また登場人物たちの言動が印象的で何てことのないセリフや情景がフッと浮かんでくることがある。
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 上巻 (新潮文庫 む 5-4)

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 上巻 (新潮文庫 む 5-4)

 

 

 

ベルカ、吠えないのか/古川日出男
戦争を生き残った4頭の軍用犬の血筋を追いかけつつ、現代に至るまでの犬と暴力の歴史が語られる群像劇。
犬自身は何も語らず、犬に語りかけるような地の文はクセになる。正直、古川日出男さんの文体は読みにくい部類に入るのだが、本書は読みやすい部類に入る。
非常に稀有な作品で小説に登場させるならば幾分か人間らしいキャラクター付けを行うことが多いと思うが、登場する犬はどこまでいっても本能のままに生きる犬。喋ることも内心で思っている言葉も発せずに、ただただ行動する。食べて、生きて、子孫を残し、死んでいく。20世紀をかけ走るハードな作品。
ベルカ、吠えないのか? (文春文庫)

ベルカ、吠えないのか? (文春文庫)

 

 

 

世界音痴/穂村弘
穂村弘さんの日常を赤裸々に語るエッセイ本。転びそうになった彼女の手をつい話してしまったり、夜中に菓子パンを頬張ったり、大人の醍醐味について考えてみたり。おかしくて変な穂村弘さんの性質に笑ってしまうが、その一つ一つに自身を重ねて「あるある」と言ってしまう。
世界音痴〔文庫〕 (小学館文庫)

世界音痴〔文庫〕 (小学館文庫)

 

 

 
ハーモニー/伊藤計劃
言わずもがな伊藤 計劃の長編2作目。『虐殺器官』のハードさも好みではあるが、少女時代をともに歩んだ共有する友人との再会や、人間の健康を究極まで引き上げた世界観を樹立させ、狂気的な”優しさ”は末恐ろし。それを破壊して人々を自殺へと追いやっていく世界崩壊のスケールの大きさにゾクゾクする。明るい未来というのは窮屈なのかもしれない、というユートピアの皮を被ったディストピア固定観念を崩してくれる。
ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

 

 

 

そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります/川上未映子
川上未映子さんのエッセイ本『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』は自身のホームページに掲載していた日記をまとめた随筆集。なにか面白いことを書いてやろう、こんなことがありました! と鼻息荒く書かれたブログ本ではなく、ごく自然に力を入れずに書かれているので読んでいて苦にならない。日常的な言葉の連なりのはずなのに川上未映子さんの手にかかると端正で美しく感じてしまう。
そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります (講談社文庫)

そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります (講談社文庫)

 

 

 
燃える剣/司馬遼太郎
年末年始本。新撰組土方歳三視線で描かれる、新撰組の結成と終わりの物語。組織作りの天性の才能に加え、その腕っ節と意志の強さに惚れ惚れしてしまう。歴史小説なので”佐幕””倒幕”など知らない言葉を調べつつ読み進めた思い出がある。ときどき入る小話がまた面白い。新撰組本で最初に『燃える剣』を読んでしまうと必ず土方の事が好きになってしまうでしょう。
燃えよ剣〈上〉 (新潮文庫)

燃えよ剣〈上〉 (新潮文庫)

 

 

 
ネガティブハッピーチェーンソーエッヂ/滝本竜彦
チェーンソーを振りまわす不死身の怪人と戦うセーラ服の美少女。そしてその現場に居合わせてしまった男子高校生。”チェーンソー男”がいなければ出会わなかった二人の日常と非日常を行き来しつつ距離を縮めていく。荒削りながら青春のありあまったエネルギーをぶつけた作品。NHKにようこそ、超人計画も良いけど著者自身と主人公に重ね具合に惹かれてしまう。 
 
『女郎蜘蛛の理 』と迷ったが、何度か読みなおしたのはこちら。
中央線の事故、バラバラの遺体、そして誘拐。幾つもの事件をつなげる『匣』とは…
推理ものなので犯人もネタもわかっているはずなので『匣』にまつわる気の狂いそうな妖気と京極の論理的な謎の解き明かしに毎回感心してしまう。本の厚さに手を取りにくいが、実際に読んでみるととても読みやすいのでページをめくる手が止まらない
文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)

文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)

 

 

近年の伊坂作品に敬遠してはいるが、『グラスホッパー』は殺し屋小説の名作。裏の世界に足を踏み入れた機会をうかがっていたが、「押し屋」と呼ばれる男に先を越されてしまった。押し屋を追いかける鈴木に加え、「鯨」「蝉」と呼ばれる殺し屋も押し屋を追いかけ始める。
伊坂作品にみられる物語が一気に収束していく疾走感が凄まじく、個人的に”殺し屋”という職業小説が好みだ。
  
グラスホッパー (角川文庫)

グラスホッパー (角川文庫)