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読書感想など

危険な本『村上春樹を読みつくす』/小山鉄朗

村上春樹を読みつくす (講談社現代新書)



長年、村上春樹をインタビューしてきた著者が物語をを解体していく本書。
 
著者と村上春樹との個人的なやりとりや、当時のインタビューなど貴重なエピソードなどから
作品に含まれるメッセージやメタファー、元になったであろう古典作品や神話を挙げて、作品同士の関連性を見出す。
 
「Aという発言があるので、作品にはこのような意味合いを含んでいる」と照らし合わせる。
村上春樹本人の発言に基づいているのでとても論理的な方法で、裏付けも筋も通っている。逆を言えば、著者は作品を読んでどう受け止めたのかわからなかった。あくまで村上春樹 の発言から推察しただけで、そこには自分というものがない。(わざと自分を殺して、発言に基づいて解体する事を比重にしたのかもしれないが。。)
 
なので、本書は少なくとも初めに読むべきではない。入門書でもなければ解答書でもない。
答えは自分で見つけるものだし、何が間違っていて何が正解なのか答え合わせを行うものではなく、物語を読んで自分がどう受けとめるべきなのか反芻することに意味がある。
 
誰かの意見をそのまま鵜呑みにして、自分で考えることをやめて他人の考えをそのまま流用すればそれはとても簡単なことだが、鵜呑みにする事が正しいとは限らない。
 
ナゼナニの部分を詳細に説明してくれているので、そこから飛躍したり真正面から否定しても、ぴったりと一致するかもしれないがあやふやでも良いので自分なりの考えを持ち、参考程度に読んでみたほうが良い。

個人的には読まないほうが良かったと思っている。それは解体の仕方がとても筋道が通っているので自分の考えを『引っ張られて』しまうからだ。それほど理路整然としていて危険だ。
 

 

村上春樹を読みつくす (講談社現代新書)

村上春樹を読みつくす (講談社現代新書)