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読書感想など

ビッグブラザー豚さん説『動物農場』/ジョージ・オーウェル

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ジョージ・オーウェルの『1984』は人間を支配する方法とそれに悩む主人公の心境がリアルスティックに描いたディストピア小説としてメディアで紹介され、引用されることが多い作品です。
 
私も読んだことがあったのですが、他作品を知りませんでした。作品が『 1984』だけなのかそれ以外があまり面白くないのかと思っていたのですが、偶然手に取った『動物農場』が驚くほど面白い。
 

▼あらすじ

ある農場の農場主に対して反乱を起こした動物達。彼らは動物同士で団結して作物を作り、文字を覚え、体を酷使しながらも自らの手で共和国を築いていく。人間に使役しない生活に幸せを感じていたが、先導者であった豚が徐々に独裁者へと変貌していく。
 

▼1984の原型であり、過去

「四本足はよい、二本足は悪い」「すべての動物は平等である」などをスローガンに自分たちのための理想郷を作っていく動物達。彼らを率いる豚はみんなのために考え、労働をして、苦しい時も分かち合っていた。
そんな豚を動物達が指導者として羨望されていた、労働は過酷だがそれを不幸とは思わず、むしろもっと働いてより良い生活を求める。人間に屠畜される恐怖はすでに失われ、幸福の日々だと信じている。
 

しかしユートピアであったはずの動物農場は徐々に形を変える。豚はみんなの幸せではなく、自らの幸福のために独裁的になっていく。側から見れば何とも酷い状況ではあるが、動物達からすれば今の状況と比較するものがない。そのため不幸を不幸と思わず、幸福だと言いくるめられてしまう。

 

比較という選択肢がなく、1つしか選ぶことができない状況がとても恐ろしく思ってしまう。

農場 = 社会・国 という縮図になっているのは明らかで、身近な問題としてブラックと言われている職場を連想させてしまう。
 

『1984』におけるビッグブラザーの誕生を思わせる、動物農場を支配する豚の誕生は動物なれど全くコミカルにはなっていない。むしろ人間以上に残酷で容赦がない。

 

▼どちらを先に読むか

『1984』も面白いのですでに読んだ人も多いと思いますが、『動物農場』を後から読めばどのようにして『1984』の世界が出来上がったのか過去編として楽しめます。
 
逆に『動物農場』から『1984』の順番だと、より支配が広まった世界に恐怖が増すと思います。
また登場人物を動物に例えるのが個人的に面白い。(ビッグブラザーは言わずもがな豚として想像)
 
 興味があれば一読ください。
 

 

  

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

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