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読書感想など

煮え切らない卵の新たな戦い『マルドゥック・アノニマス』

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冲方丁さんのマルドゥックシリーズの最新刊。
これまで発売されたマルドゥックシリーズを読んでいないと理解ができない敷居の高い作品ではなく、最新刊で知りましたという人でも手に取ってもらいたい。本書が面白かった、という人はその後で過去シリーズを追いかけて登場人物の過去を知るのも一つの楽しみだと思う。
 
最初のシリーズにあたるマルドゥック・スクランブルはアニメ化、漫画化(『聲の形』大今良時さんの作画)もされた作品でもあり、完全版として作者によってリライトされたこともある。
 

▼簡単な概要

エンハンサーと呼ばれる遺伝子を改造された能力者同士の戦いを描きつつ、事件の捜査や身元引き受け人としてボディガードとして任務に当たるなどSFハードアクションにあたる作品となっている。

 

▼魅力的なキャラクター

シリーズの主人公ともいえる金色のネズミ:ウフコックは様々な武器・道具に変身することができる”型万能兵器(ユニバーサルウェポン)”という能力を持ち合わせ。一瞬にして拳銃に変身をしたり、手錠に変身して拘束する子もができる。また、人間並みの知能を持ち、鋭い嗅覚を持っており殺意の匂いや安心の匂いなど人間の感情を嗅ぎ分けることができる。
 
その他にも様々な動物の視覚能力を持つ元海兵隊のウフコックの相棒、体内で薬を精製して情報を聞き出す交渉人など、どれも個性的で誰もが主人公並みの魅力を持っている。
 

▼悪ってやっぱりいいよね

ウフコック率いるチームのアヴェンジャーズ感に対する謎のギャングチーム。こちらを表すならスーサイド・スクワット感。チーム同士の戦いに、「これはアヴェンジャーズVSスーサイド・スクワットだ!」と勝手に盛り上がってしまった。能力者がわんさか登場するので副題に「エンハンサー大戦争」とつけてもいいほどだ。
 
登場するエンハンサーはどれも魅力的だが、いつ誰が死んでもおかしくない。互いに強力な能力を持っているので紙一重で生き残っているようなものだ。能力者同士の戦いはダラダラとならず、とてもスピーディに展開される。個性的なビジュアルもイメージしやすくテンポよく進むので飽きることない。
 
また、ギャングチームの描写に映画『バッドマン:ダークナイトのジョーカーを見ているときに感じた高揚感があり、悪事のはずなのにとても惹きつけられてしまう。
 
キャラクター小説としても一級品であり、アクション・SF・ハードボイルド、どこを切り取っても上質。アクション系のマンガ、アニメ、映画好きという人には是非手に取ってもらいたい。
 

 アノニマスの販売を記念してkindleで無料で読むことができる予告版『Preface of マルドゥック・アノニマスが配信されているので興味があれば先にそちらをどうぞ。

 

 

 

 

 漫画版は今になってはほとんど出回ってないのでkindle版があってとても驚いた。