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読書感想など

階級付けされた世界で"偶然"起きる逆転劇『偶然世界』/フィリック・K・ディック

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偶然誰かと出会う、偶然探していたものが見つかるなど日常生活において偶然という現象は奇跡よりも多く発生し、奇跡以上に幸福もしくは不幸を呼び起こす。
 
フィリップ・K・ディックの長編第一昨の本作ではその偶然によって生活が一変し、それに翻弄される人々を描いている。
 
最高権力者であるヴェリックは公共的偶然発生装置(通称ボルト)のランダムな動きによって地位を落とし、逆に最下位クラスの無級者カーライトが最高権力者の地位を得ることとなる。そのカーライトの命をヴェリックは狙い、いつしか暗殺者と超能力者のバトルが始まる。
 
日本で言うならば、普通の生活を送る政治と一切関わり合いのない一般人がその日のうちに前触れもなく首相になってしまうのと同じだ。何でもない自分がいきなり今日から最高権力者になったら…と想像すると権力があるのにむしろ何もできない。
 
クラスごとに階級が決まった世界ではランダム装置があり、超能力者が存在し、月にも宇宙にも行くことができる。様々なガジェットや世界の構造、階級付けされた社会などSF的な要素が含まれている。そこに細やかな説明がないために初めて読むときは少々戸惑うが、その空白を埋めるように想像を掻き立てられる。

 

偶然世界 (ハヤカワ文庫 SF テ 1-2)

偶然世界 (ハヤカワ文庫 SF テ 1-2)