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読書感想など

【小説】ジェイルバード/カート・ヴォネガット

スターバックという老人は80年にわたる人生を過去・現在の区別なく語り続ける。彼の話はあっちこっちに飛んでしまい、しっぽをつかもうとしてものらりくらりと手から逃れていく。わずかに残った欠片を拾い集めては「一体これは何だろうと」としげしげと眺める間もなく、次の話が始まる。
 
共産主義でそれがきっかけで首になり、再雇用され、ウォーターゲート事件に巻き込まれ囚人となった。愛した女は四人。息子には久しく会っていないそうだ。語り口は傍観者のように感情が見られない。他人のレポートの断片を語っているようだが、時折見せる
 
スターバック氏もようやく腰を据えて現在を語り出した。「ようやく捕まえたぞ」と彼の腕を掴んでみれば、あれよあれよという間に引き込まれた。
気がつけば彼の背後に立って成り行きを見ていた。金に翻弄され、上手く生きていけず、自らを囚人としてしまう人々。
人と人が織りなす苦みや悲しみ。
そしてジョーク。ピース。
今まで生きてきた欠片が回収されていく。話を聞き終わる頃には今まで集めていた欠片が一つになっている。
 
『ジェイルバード』
スターバック氏の自伝である。
 

 

ジェイルバード

ジェイルバード