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読書感想など

【映画】ジョーカー

なぜ彼が生まれたのか、いや生まれざる得なかった。不遇の生活の中でも笑いを絶やさないで、という母の言葉に支えられながら底辺の生活を過ごすアーサー。しかし母の嘘、誰からも相手にされず、居ないのもとされる。暴力を受け、笑わせではなく笑われる。

限界を超えるギリギリを保ってたが、1つの拳銃がタガを外してしまう。拳銃という装置を持ってしまった。チェーホフの銃の通り、それは使われる。

上流と下流。貧富の差。いや、たとえ貧しくともアーサーには母と笑いさえあればよかったのだ。しかし変わらないものなどない。

現実と自らが生んだ妄想にも裏切られた何もない。何もないからこそ本当の自分を出した。

彼は悪なのだろうか? 暴力を振るわれなすすでなく自己防衛で撃った。しかし本当だろうか? 撃ってやると、殺してやると思ってたからこそ携帯して銃弾も込めてた。止むを得ずなのか?

だがあの瞬間心がスカッとしてしまった。恐ろしい事なのにやってはいけない事なのに心から「よくやった!」と込み上げた。

例のあの人も殺されて当然だと思ってしまった。

テレビを見ながら「もし自分が出演するならば」とつい妄想してしまう、実際に居間に座りながら演じてしまう。何度も言い直してみる。アーサーのその姿に可愛らしいと微笑んでしまう。

アーサーがジョーカーへと変貌。

いや、ありのままの自分を出したあの瞬間から彼の本当の人生が始まった。青春の始まりなのだ。だからこそ夜を眺めるジョーカーの姿が美しいく応援してしまう。

題名のジョーカーが、なぜ「ザ・ジョーカー」ではないのか。

the は 唯一無二の存在や特定の人を指す。

ジョーカーはたった1人の人物ではなく無数にいる人々。遠く海の向こうの人かもしれないし、隣人からもしれないし、自分かもしれない。

この映画にはその危うさがあり、共感性が高く、ゴッサムではなく実際に生きるこの世界を描いている。