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読書感想など

【小説】未必のマクベス/早瀬耕

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深夜3時近く、1日かけて本を読み終えた後で小銭を集めて近くのコンビニへと向かう。ドラゴンボールのTシャツにハーフパンツ、少し肌寒いのでカーディガンを羽織った。寝巻きではあるが、こんな時間だしいいだろうという判断の上だ。

歩いているとどこからか話し声が聞こえてくる。留学なのか、集団で働きに来ているのか分からないが近くのある一角では東南アジア、中国、韓国の人たちが住んでいる。すぐ近くを通るとスパイスの様な香りが漂ってくる。彼らも寝付けないのだろうか。

コンビニではラムとコーラを購入。(あいにくダイエットコーラを購入する小銭が足りなかった)正しい作り方も材料も足りなかったが、ラムを少量注いでから氷を幾つか落とし、残りはコーラで埋めていく。マドラーはないので指で回す。一口飲む。甘くて辛い。


『未必のマクベス/早瀬耕』を読んだ。
”未必[みひつ]必ずそうなるものではない、といった表現。”
この言葉の読み方(みつひつ?みっひつ?)も意味も知らず、もう半分のマクベスも読んだことがない。もう一つ加えれば失礼ながらTwitterでフォローしているにも関わらず早瀬耕さんの著作も初めて。全くわたしの知らない事ばかり。そのため途中で切り上げてシェークスピアの『マクベス』を購入しその日のうちに読んだ。

”実現されたらされたで構わない”未必にはその様な意味も持ち合わせてる。主人公の中井という男はマクベスに仕立てられていくが、それに反発せず「マクベスになったらなったで構わない」という人だ。
読んでいる最中、これはどのジャンルに当てはまるのだろうか? と考えていたが、途中からジャンルを気にすることがなくなった。ただその文章に取り囲まれて懐かしさと彼らの初恋に身を寄せていたい。
キューバ・リブレがなくなったので、もう一杯作る。そういえば今日は色々な店を渡り歩いてこの本を読んだな、と無理に自分に関連付けてみたりする。

 

 

未必のマクベス (ハヤカワ・ミステリワールド)

未必のマクベス

  • 作者: 早瀬耕
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2017/09/21
  • メディア: 文庫本
 

 

【小説】サマーバケーションEP/古川日出男

8月はとうに終わり、9月も半ばになろうとしている。残暑はまだ続いているが、今年は夏そのものを体験したという気持ち良さを感じることができなかった。
 
平日は朝晩以外は外に出ることなく、激しい太陽の光を浴びる機会に恵まれず。休日も曇りや雨が多いためか気温もそこまで高く感じなかった。いわゆるうだるような暑さを感じずに夏が終わってしまった。バットマンヴィラン:ペンギンは地球温暖化から氷を守ると言っていたが、はてさて本当に温暖化が進んでいるのか疑問に思ってしまう。
 
けものフレンズが再放送されたことは記憶に新しいが、夏の再放送といえば、スラムダンクだ。夏の間だけなので到底全話放送はできず、毎年の方に途中で切れてしまう。いつの夏からだろうか、それも終わってしまった。
 
イカは食べた、祭りに行かなかった、花火は雨のなか見た、カキ氷を食べていない、プールに行かなかった、浜辺にはいった。そういえばこの本を読み返さなかったなと本棚から取り出した。
 
『サマーバケーションEP』ただ歩いて東京を横断する。それだけの話だが、ここには私の憧れがいくつも詰まっている。
 
《内容紹介》

僕は冒険をするために、井の頭公園に来たんです――

20歳をすぎてようやく認められた〈自由行動〉。他人の顔を憶えることができない「僕」は、出会った人と連れ立って、神田川を河口に向かって歩き始める。世界に対する驚きと無垢さに満ちた、再生の物語。

 
サマーバケーションEP (角川文庫)

サマーバケーションEP (角川文庫)

 

フィリップ・K・ディック短編集など

その日は映画を見るために新宿バルト9へと向かった。
あまり行った事がない映画館だったのでチケット売り場が長蛇になっている事に驚いた。いつも行っている映画館は昼でもそこまで並ぶ事がない。地域差なのか、作品数の差なのか、単純に売り場が狭くてチケット販売機の数が少ないせいなのかは分からない。
 
10分ほどして自分の番が回ってきたので19時からの「パワーレンジャー」を選択。まだ時間に余裕があるので席もそこまで埋まっていない。料金払いをする為に、クレジットカード払いを選択。クレジットカードを専用機にスライドさせるが、読み取ってくれない。
 
裏表を試してみるが読み取らない。逆さまにしてみるが読み取らない。もう一回最初の向きで試してみるが読み取らず、「お客様のご使用のクレジットカードご使用できません」といった内容の文言が表示されるのみ。現金で支払いチケットを受け取るが、足元がグラグラする。
 
・限度額いっぱいに何か購入しかた→これといって何も購入していない。
・カード情報が流出したか→ないとは言えない
・不明な動きがあればカード会社から連絡があるのでは→カード会社も絶対ではない。
・確かクレジットは一度止めたら再発行するのが面倒だったはず→背に腹は変えられない。
 
行き先も決めずそんな事を考えていた。さっきまで映画を楽しみにしていたのに一気に急下降。逆さまだ。ぐらりぐらり、気温の暑さとは別の体内から汗が流れ出てくる。腹も痛くなってきたので堪らず三越のトイレへと駆け込む。
 
古いビルなのでこじんまりとしているが、きれいに整備されているトイレに感謝しながら、「さっきのは単純にバルト9が取り扱いを止めていたのでは」という楽観的に捉えようとした。しかし確信が持てない。使用できるかどうかはもう一度使ってみるしかない。
 
と、尻を拭いてから暖かいお茶を買い求め、ブックオフエスカレータを登り文庫本コーナーへ。そこで記憶喪失者の視点から始まる「異邦の騎士 改訂完全版 /島田荘司」を手に取り開いた。

 

 

”とてつもない恐怖ーーー!”

 

 
私もそうだよ名も知らぬ人よ!
 
レジへ向かい、クレジットカードを差し出す。数100円をクレジット払いというのも心苦しいがこれしかない。カードを読み取り、番号を打ち、数秒待つ。「ブックオフのおじさんお願いします」とブラックエプロンのスタッフさん相手に祈ってると決済があっさりと通った。
 
読み通りバルト9ではカード使用の扱いを止めていたようだ。
クレジットカードは問題なく使用することが分かり、このディック的な世界から抜け出すことができた。あれだけ色が失われていた世界が極彩色に見える。私は暖かいお茶を口に含んでから映画館へと向かった。
 
手持ちのフィリップ・K・ディック著書をまとめて読んだ。
幾つものシチュレーションで繰り返される人間と非人間の境界の曖昧さ、というモチーフ。アイデンティティの崩壊を垣間見た人物の悲喜交々は現実とよく似ている。
 

 

 

スキャナー・ダークリー (ハヤカワ文庫SF)

スキャナー・ダークリー (ハヤカワ文庫SF)

 

 

 

流れよわが涙、と警官は言った

流れよわが涙、と警官は言った

 

 

 

人間以前 ディック短篇傑作選

人間以前 ディック短篇傑作選

 

 

 

異邦の騎士 改訂完全版

異邦の騎士 改訂完全版