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読書感想など

幽霊側の視点に立つことで見える風景『ハサミ少女と追憶フィルム』/佐島 佑

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ハサミ少女と追想フィルム (角川ホラー文庫)

著:佐島 佑

内気な美大生の道郎は、おかしな先輩・檜垣に映画作りに誘われる。檜垣に渡されたホラー映画を見ていると、画面から大ハサミを持った少女が飛び出してきた! 以来、不思議な事件に遭遇するようになり……。

 

大学入りたての主人公は少し風変わりの先輩に振り回されて、さらに先輩の知り合いの変人と知り合うというのはパワーン化されているなー、という印象。
 

ホラー物としての立ち位置

ホラーとしては怖さはない、幽霊は出るもののそれ自体に恐怖は感じない。
基本的にホラーものは襲われる側の目線に立っているが、主人公が自分の主観からハザマ(幽霊)の相手の目線に立つことで成仏をさせて、さらに関わった人間も救済しているの。
 
退治よりも救済

キャラクター小説として

ハサミ少女ことカルミンはハザマが現世に繋がられている鎖を切ることでハザマを成仏(?)させることができる。
基本的には主人公がハザマと現世を繋いでるモノを探し当てて、それを切る時のみカルミンが現れるのでバディものとしては色が薄くなってしまう。しかしカルミンのシーンを多くすると人間側のヒロイン速水とのバランスが悪くなってしまう。
 
大学を舞台にすると新しい土地、学校、人間関係が生まれる。大学には風変わりの人がいて、社会とつながっていることもあり、割と自由に人を動かすことができる。大学という枠で縛られてはいるが自由な時間が多く展開が作りやすいので続編でも様々なシーンが作りやすい。
 
見た目は外国人なのに日本語が話せるには、日本語吹き替え版の映画から飛び出てきたからという設定は面白かった。