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読書感想など

音楽偏愛な探偵役『演奏しない軽音部と4枚のCD』/高木 敦史

著:高木 敦史
高校一年の秋、楡未來は亡き叔母が“4枚同時再生が必要な”CDを遺した意味を探るため、軽音部の部室を訪れた。そこで待っていたのは、演奏しない「聴く専門」部員・塔山雪文。挙動不審で怖がりだけど、音楽にはものすごく詳しい塔山の力をかりて、未來は叔母の真意を追う。架空言語で歌う曲を題材に書かれた小説の盗作騒動、壊されたギターと早朝の騒音との関係など、学校で起こる事件を音楽の知識で解き明かす全4篇。
 

 

亡くなった叔母から渡された4枚同時再生が必要なCDの意味を探るために軽音楽部の塔山のもとへ訪れることになった。はじめは躊躇した塔山だが、亡くなった叔母が経営してた中古CDショップは塔山も客として通っていたこともあり協力をすることとなった。
 

音楽偏愛な探偵役

塔山雪文は音楽オタク(マニア?)である。普段はおとなしく無気力で怖がりだが、音楽のことになると謎解きを忘れ、そのCDに関する知識を次々と喋り出す。その一気にテンションが変わりベラベラとまくしたてる様がクスりと笑える。
そしてその知識で謎も解いていく。
 
プログレは、プログレッシブ・ロックの略だ」立ち上がり、両手を広げる。
「あーあ。始まった」真由はため息をついた。それを少しも気にせず、塔山くうは嬉しそうに語り出す。
「簡単に言うと既存のロックの枠を外れた音楽なんだ。一九六0年代後半、コンパクトで親しみやすいメロディが好まれるようになったことに反駁して作られた、やたら前奏が長かったりやたら転調を繰り返したり、やたら技巧に凝ったりした音楽のことだよ」
(中略)
「でもさ、それより原稿…」

 

音楽にからめた謎解き

一見音楽と接点のないような事件が発生するので、「おや音楽要素は一体どこにあるのだろう」と疑問に思っていると「そことそこがつながるのか」とまさかの方向から飛んでくる。謎の解決の先にはどこか諦めに似た感情や寂しさ、悲しさ、祈り、贖罪が待っている。日常だからこそ犯人の行動原理を理解できるし犯人側の視点にたってしまう。楡もまたそんな犯人の思いをくんで行動に移るシーンが印象深い。
 
4章+ボーナストラックで一冊となっている本書はストーリー仕立てのアルバムを聴いているように心地よいメロディの様になんて、音楽の知識がないのでうまくは書けないが、優しいメロディが絶え間なく流れている。
 
文体も柔らかすぎず読みやすいのスラスラ読めました。
音楽好きからするとザイリーカやコンタルコスは知ってて当然なんですかね?