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読書感想など

退屈と刺激が収束する総合小説『罪と罰』/ドフトエフスキー

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自身の中の課題図書の一つ『罪と罰』を手をつをつけることにした。

 

まず読むにあたりどの出版社から出ている『罪と罰』にするか選考しました。現在出版している会社は以下のとおり

岩波文庫

新潮文庫

・光文社古典新訳文庫

 

人によっては翻訳者によって選ぶ人もいる様ですが、初のドストエフスキーなので正直誰が良いのわかりません。翻訳の優劣も重要だと思いますが、外国小説を挫折する理由の半分以上は名前が覚えられないのが原因なので、まず登場人物一覧の有無を確認しました。日本名じゃないとどうしても覚えきれず、一覧表がないと読み返さないと誰が誰なのかわからなくなるので個人的に必須事項です。

 実際に確認をしてみると新潮文庫にはなく、岩波文庫に入っていたので少しお金はかかりますが岩波にしました。(光文社古典新訳文庫に関しては近くの書店で扱っておらず未確認のままです。)

 

 実際に読み進めると登場人物の名前が似ていたり、同じ人物でも人よって呼び方も違ってくるので(ファミリーネーム・ミドルネーム・ファーストネーム・愛称など)岩波文庫を選んで正解でした。

 

あらすじ

元大学生ラスコーリニコフは金貸しの老婆を殺害し、金品を盗もうとするが殺人現場に軍善にも老婆の妹が現れ思いがけず殺害してしまう。予想だにしなかった第二の殺人を犯してしまった彼は罪の意識を増長されてゆく…

 

ミステリー『罪と罰

簡単なあらすじを知っているので酔っ払いのオヤジが絡んできたり、ずっとうつつを抜かしていて退屈していたが、老婆の殺人から一変する。殺人から金銭を盗むまでの慌てようから、第二の殺人まで起こして逃げ出そうとすると部屋の外には人がいる。どの様にこの場から逃げ出すのか!というサスペンス要素があったり、証拠を隠し捜査官から何度も揺さぶりをかけられるミステリーとしても鬼気迫るものがある。

 

ラスコーリニコフの謎

盗んだものを隠し、警察に追われることを怯えているかと思いきや自供するような発言をする。捕まりたいのか、捕まりたくないのか常に揺らいでいる。だからこそ”罪を犯した”という事実をと行動の矛盾が現実味を帯びて描写されている。

基本的にはラスコーリニコフの犯した罪を主軸にしているが、母妹/妹の婚約者/警察/友人/偶然出会いなど多くの人々が登場する。その多くは彼の犯した罪と直接的に関わり合いのない人物だが、彼の『罪(内世界)』と『外世界』が入り混じる事でラスコーリニコフという人間の形が見えてくる。最初はブレブレで優柔不断な性格かと思いきや特定の事には頭が回り、家族に危害が加わりそうになると自ら進んで障害を排除する。

自己紹介型の小説は大いにあるが、本作はラスコーリニコフが多くの人間との会話や出会いによって読者側が彼自身を理解してゆく。一番の謎は彼自身であり、それを解き明かしていく。

 

無駄だと思うものが収束していく

読んでいる最中はラスコーリニコフが罪を意識するシーンや追い詰められるシーンが面白く、その他のシーンが退屈に思ってしまう事があった。「一体これに主人公が犯した罪とどうつながるのだろうか?」と思ってしまう事もあったが、その退屈と思えるシーンや多くの登場人物は後半になるにつれ確実に響いてくる。思えば序盤の酔っ払いのオヤジがここまで重要性を帯びてくるとは思わなかった。

ラストには全てのシーン、全ての登場人物が彼という人間に相互的に影響され収束していく。どのシーンも飛ばしてはいけない。(長いのでメモしながら読むのがオススメ)

 

終わりに

罪と罰』で描かれている当時のロシアの貧民状態は社会文化の一面として語る事でき、宗教的な面や、人間ドラマ、家族愛、無償の愛など語るべき要素が多すぎるし、まだ気がついていないメッセージが隠されている総合小説とも言えるだろう。しかしその解体は専門家にお願いしたい。

上記に書いている事もより深く『罪と罰』を理解している人からすれば的外れな事が書かれているかもしれない。

ただ言えるのはラスト数百ページを読んでいる最中に震えが止まらなかった事だ。全体の理解度なんで半分も満たないし、名前の呼び方は人によって変わるし分かりにくく不満もあった。しかしラスコーリニコフの告白や心の内に作用したのか(どこがトリガーなのか自分でもわからない)、論理的な説明ができない。しなくてもいい気がする。”心が震える”なんて安易な言葉ではあるが、これが心が震えると言えるのかしれない。

 

なぜドフトエフスキーの作品が今でも読み続けられ、他の作品でも引用されているのか、その理由を少し理解できた。
 

罪と罰 上 (岩波文庫)