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読書感想など

人類皆異常であり正常である『異常探偵 宇宙船/前田 司郎』

 

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「○○探偵○○」というタイトルの小説や漫画があれば、それは探偵の特徴と名前を示している。タイトルからして出落ち感があるが、キャッチーなものほど手に取ってみたくなる。
「異常探偵 宇宙船」その名の通り、異常な探偵であり、名前が宇宙船という。
 
どの様に異常なのかと言えば、年がら年中、頭巾を被っている。そうあかずきんちゃんの頭巾だ。パートのレジ打ちの時にも外すことがない。
言い忘れていたが宇宙船は主婦だ。夫もいる。ただし本物の夫は善良な宇宙人に連れ去られてしまった。いま一緒に住んでいるのはそっくりな別人だ。
さて、探偵と言えば鋭い洞察とひらめきで犯人を突き止めたりトリックを暴いたりするものだ。宇宙船と言えば、宇宙からの声を聞いて事件を解決する。頭巾を被っているのは、被っていないと様々な声が聞こえてしまうからである。
 
が、しかし宇宙船自身が、自分のことを「異常探偵」とは言わない。彼女の姿や言動を見て、他者が「異常」だと決めつけているのである。
宇宙船からすれば、宇宙人はいる。誘拐された家族を助けたい。頭の中で自分だけにしか聞こえない声が聞こえる。すべてが「正常」なのだ。
しかしはじめから異常では無かった宇宙船はすべて自分の生み出している妄想なのでは、と揺れ動かされる。
 
宇宙船をはじめとする面々はみなマイノリティ側の人間である。作者の前田司郎氏はファッションとして異常を扱うのではなく、人間としての葛藤や苦しみを抱えている彼らに真摯に向き合っている。
 

 

異常探偵 宇宙船 (単行本)

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