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読書感想など

上半期のベスト本

今週のお題「2016上半期」

タイトル通り上半期に読んで面白かった本のまとめになります。新刊と既刊で上半期だけで67冊読むことができました。目標にしているわけではないですが100冊は超えそうです。

面白そうな新刊はTwitterなど情報を集めてみるのですが、ことごとく大きな書店でしか置いてない事がありちょっとさみしくなります。とはいえ理由はなんとなく分かります。最近は文庫本で1000円超える事も珍しくもなく海外本が多いので街の書店だとはけないんでしょうね。

とこの辺で上半期に読んで面白かった小説をご紹介しようと思います。
過去に何度も読んだ本は除いて初めて読む本を対象に月ごとに一冊選びました。

▼1月

百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez)

百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez)

 

 正直読むのがとても大変。同じ名前の人が多数出てくるので、あれ?この人はどの世代の人だ?と混乱する。

たった一行で終わるエピソードもあるのだが、そこが妙に面白い。矛盾だらけの小説を読むと矛盾だらけの気持ちになる。

時点:

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 (文春文庫)

 

▼2月

パプリカ (新潮文庫)

パプリカ (新潮文庫)

 

 映画を先に観ててそれから原作を読みました。映画も頭がくらっくらしましたが、原作はそれ以上にエロティックでまさにカオス。
時点:

デッド・ゾーン〈上〉 (新潮文庫)

 

▼3月

あるいは修羅の十億年

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一般受けしにくいと好事家に評判な古川さんですが、今回も古川節炸裂。序文がめっちゃくちゃカッコ良よくて膨大なイメージが脳味噌に注ぎ込まれる感覚が癖になる。
時点:

クロニスタ 戦争人類学者 (ハヤカワ文庫JA)

 

▼4月

マルドゥック・アノニマス 1 (ハヤカワ文庫JA)

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久しぶりのマルドゥックシリーズはエンハンサー同士の戦争。一言で言うなら「アヴェンジャーVSスーサイド・スクワッド

悪のカリスマ揃ってます!
時点:

ディスコ探偵水曜日〈上〉 (新潮文庫)

 

▼5月

アックスマンのジャズ (ハヤカワ・ミステリ)

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時点:

20億の針【新訳版】 (創元SF文庫)

 

▼6月

カメリ (河出文庫)

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時点:

パルプ (ちくま文庫)

パンドラの少女

 

特におすすめしたいのは『アックスマンのジャズ』です。続編も出るそうなので今から楽しみ

 

▼これから読む本

宇宙ヴァンパイアー (新潮文庫)

ビビビ・ビ・バップ

 

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控えめに言ってカバーデザインがかなりキてる!

 

ドラック博物館へようこそ『アマニタ・パンセリナ』/中島らも

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本書は決して薬物のススメではなく実際の体験(!)を交えた反薬物のススメ隣っている。
数々の薬物・合法ドラッグを疑似体験しているかのような感覚に陥り、そして著者が現在進行形で中毒になっている(本書が出版された当時)薬物など未体験ゾーンが広がっている。
 
悪い事を覗き込んでいる出歯亀精神をくすぐられてしまうが、読み進めるごとに「いやーこんな辛い事になるなら、やらない!」と薬物をさらに遠ざけてしまう。
 
しかしながらその恐ろしさを側から見る分には真面目に書けば書くほど笑いと興味が起きてしまう。
医学が生んだ薬物から儀式としてその時だけ摂取するサボテンなど幅広く紹介され、効果の違いや日本や世界においての罪と罰、その成り立ちまで記述されており知識の吸収としても面白い。
 
その中でもハッとしてしまったのは「ヒクリさま 続編」にて青いものが発光しているように美しく見え始め、その章の終わりの言葉だ。
 
青色に対する感受性は、その後も開きっぱなしだ。(中略)異常というよりは、それまで鈍く目づまりしていた色彩に対すつ感性が正常に戻ったのでないだろうか。世界というのはほんとうはとてつもなく美しいものなのかもしれない。
 P113

 

薬物による怖さを感じつつ、もしかしたら薬物によって正常に戻ったのでは…とつい思ってしまった。正常とは何を基準にしているのだろう。
 
近年の合法ドラッグの事件やニュースを見るに、本書に書かれている事と何が異なっているのだろうか。出版は1995年、20年以上の隔たりを感じさせない。むしろ今だから読んだほうが良いのではないだろうか。
 

 

アマニタ・パンセリナ (集英社文庫)

アマニタ・パンセリナ (集英社文庫)

 

 

階級付けされた世界で"偶然"起きる逆転劇『偶然世界』/フィリック・K・ディック

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偶然誰かと出会う、偶然探していたものが見つかるなど日常生活において偶然という現象は奇跡よりも多く発生し、奇跡以上に幸福もしくは不幸を呼び起こす。
 
フィリップ・K・ディックの長編第一昨の本作ではその偶然によって生活が一変し、それに翻弄される人々を描いている。
 
最高権力者であるヴェリックは公共的偶然発生装置(通称ボルト)のランダムな動きによって地位を落とし、逆に最下位クラスの無級者カーライトが最高権力者の地位を得ることとなる。そのカーライトの命をヴェリックは狙い、いつしか暗殺者と超能力者のバトルが始まる。
 
日本で言うならば、普通の生活を送る政治と一切関わり合いのない一般人がその日のうちに前触れもなく首相になってしまうのと同じだ。何でもない自分がいきなり今日から最高権力者になったら…と想像すると権力があるのにむしろ何もできない。
 
クラスごとに階級が決まった世界ではランダム装置があり、超能力者が存在し、月にも宇宙にも行くことができる。様々なガジェットや世界の構造、階級付けされた社会などSF的な要素が含まれている。そこに細やかな説明がないために初めて読むときは少々戸惑うが、その空白を埋めるように想像を掻き立てられる。

 

偶然世界 (ハヤカワ文庫 SF テ 1-2)

偶然世界 (ハヤカワ文庫 SF テ 1-2)