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読書感想など

【小説】世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド/村上春樹

2016/1/1読了
 
年が開ける前の30、31、そして1/1で読み終えた。
忘れているシーンが多く何度も読んでいるにもかかわらず新鮮な気持ちで読んでいた。そして読み直している時に気がついたことがあった。2つのパートは並行して進んでいると思っていたが、「ハードボイルド」の章で眠ってしまった僕(主人公)が行き着いた先が「世界の終わり」の章ではないだろうか。

 

前半の冒険・探偵パートも好きではあるが、一番好きなのは自分の死(心の中で生きる)を知ったあとで、今まで気にもしなかった事を知り、その事に喜びを感じるシーン。
 
かたつむり、クリーニング店の店主、植木、レンタカー、タクシー、音楽、服。
普段通り過ぎていく街の細部を知る事で、今まで自分は世界についても何も知らなかった事に気がつく。カウントダウンは止める手段はない。今更になってこの世界を慈しみはじめたが、それには遅すぎた。
遠くを見るだけでは手に入らないものが沢山ある。それはいつでも身近にあって、気がつく事ができるのは僅かな人間。
 
一つの風、一つの木、一つの雨。
実体としてそこにあるものと自分の内側を繋げる事が出来るか否か。それが問題ではあるが、実際にはそんな些細な事に気がつかなくでも人生を歩む事はできる。ただ自分はその細部に気がついて、愛でていきたい。
 

 

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 上巻 (新潮文庫 む 5-4)

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 上巻 (新潮文庫 む 5-4)

 

 

 

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 下巻 (新潮文庫 む 5-5)

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 下巻 (新潮文庫 む 5-5)

 

 

【映画】君の名は。

夜の回だったので人も少なく、落ち着いて見ることができた。

なぜここまで観ることを引き延ばしてしまったのか、それは主人公の「瀧」と「三葉」が入れ替わることで互いに恥をかいてしまうシーンがあるのではという不安があったからだ。
どうも自分はああいったシーンがあると自分まで恥ずかしくなってしまい、途端に観たくなくなってしまう。しかし実際見てみると、ボカされていることもあり一安心。

入れ替わることや、その他の大ネタ部分は言ってしまえば設定や考証としてガバガバ。だけど「そんなこと気にすんな!」と言わんばかりの”気持ちよさ”がそこにはある。

あるシーンへとつながるピースがそこらじゅうに散りばめられており、それがどんどん回収されていく。
その気持ちよさ、画面の美麗さ、キャラクターが書き割りではなく血肉を持って行動する生命感に「あっイク!」となり、矛盾などどうでもよくなる。
(逆を言うと見終わった後で色々と気がついてしまう)

これは震災映画の一つで、もしかしたら出会えたかもしれない人々と出会えるのならば…という願いや望みの映画なのかもしれない。

だからなのか劇中ではカップルムービーとしてバリバリ押し出しているわけではなく、感傷的な雰囲気が漂っている。また、個人的に震災映画とカテゴライズしてしまったせいか、あるシーンである人がポツリとつぶやいた言葉で目が痛くなるほど号泣した。

観るのが遅かったがほとんど感想などの情報を入れていなかったので今更知ったのですが、東広紀さんが「オタクの時代は終わったんだなということですね」と発言したんですね。
http://togetter.com/li/1022432

 

カップルムービーとしての一面も確かにありつつ、プラトニックラブを求めるオタク的な面もある。
子供アニメやジブリなど地位を築いているアニメならばまだしも、なぜここまでヒットしているのか? 考えてみるとアニメや萌え系といったものがメディアのおもちゃになった時代から「あの花」や「サマーウォーズ」などの青春アニメが土台となってくれたおかげで、アニメを観ることが一般的になった。
つまりは娯楽としてアニメを消費する世代(10〜20代)が出てきたのが今回のヒットに繋がっているのだろう。

ライトなアニメであればオタクと一般人という境界はすでになくなっている。面白いもの心揺さぶるものを”アニメだから”という理由でフィルターをかけてしまうのはもったいないのでとてもいいことだと思う。

「映画を観に行ったら周りがカップルだらけでキスしていた」とTwitterで見かけたが、これについてはしょうがない!むしろキスしろ、と言いたくなってしまう。

 

【映画】ありがとうスーサイド・スクワッド

1年ほど前だろうか、あの衝撃的な新ジョーカーのビジュアルが突如としてネットに流れたのは。


 
あの日から公開されるのを待ち望んでいた。そしてやっと日本公開日が決定された。それからは出来るだけ事前情報を入れたくなかったので基本的にはCM程度しか知らない状態で劇場に向かった。
 
始まる前近くの席にいたオジさんが大きな咳をしたり、ガサゴソと袋菓子を食べ始めたので、
「おめぇ、始まってからもそれをやったら◯すぞ!!」
とある意味スーサイド・スクワッドを観るためのコンディジョンはバッチリと整った。
 
そして始まり…そして終わった。
 
何でしょうDCはみんな大好きダークナイトを超える映画を作る気はないのかもしれない。
 
ジョーカーを始めとする、ハーレークインなどのキャラクタービジュアルは100点を軽く飛び越える。そこには全くもって問題がない。ただ映画内の要素が多くてブレブレすぎて、どこが抜きどころなのか分からない。
マーブルと同じように映画でも全ての作品が繋がるようにしているの良いとして、「ああ、もうちょっとでトリップできるのに!」と色々とゆるい。
 
観たあとで原作からしてジョーカーはほとんど登場しないと聞いたが、こちとらジョーカー不足なんだから意地でも出しやがれ!と言いたくなってしまう。
正直ハーレークインを観るためにお金を払ったようなものだが、CMで良いシーンをほとんど使われてしまっている。繰り返すようだが、ビジュアルは最高なのでハーレークイン演じるマーゴット・ロビーに惚れた人は 「ウルフオブウォールストリート」を観ると良いことあるよ。
 
また、一応デッドショットが主人公扱いのようだが、(クレジットでも一番上)こちとらジョーカーとハーレークインを観に来てるのでウィルさん求めてない。あといい加減に子離れしなさい。
 キャストつながりでは日本人キャラ「カタナ」演じる福原カレンさん。しょうがないとは思うが、彼女は日系アメリカ人のせいなのかちょっと日本語がたどたどしい。
またあるシーンで登場するヤクザ?の日本語がそれ以上にギャグみたいな片言。メリケン映画では時々見かけるがシリアスシーンでそりゃないぜ。
 
エンドロールが流れ明かりが点くと、私は牙の抜けた狂犬のように穏やかな気持ちになっていた。
上映中、バリバリと音を立ててたあのオジさんを◯す気もなくなり劇場を去った。
 
あなたのおかげで刑務所に入らずに済みました。
 
ありがとう…ありが…とう。