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読書感想など

回数制限つきのループもの『七回死んだ男』/西澤保彦

 

七回死んだ男 (講談社文庫)

七回死んだ男 (講談社文庫)

 

 

あらすじ

一日を9周繰り返すSF的体質「反復落とし穴」を持つ主人公。そんな特異体質の主人公の祖父が殺人事件に巻き込まれてしまう。容疑者は正月に集まった親戚一同。犯人は誰なのか、どうやって死を回避されるのか、ループが始まるたびに殺されてしまう祖父。孤軍奮闘の末の解決方法とは!

 

作品の面白さの種はもちろん「反復落とし穴」(簡単にいえば回数制限ありのループ)という体質。

1周〜8周までに祖父が誰に殺されてどの様に死ぬのかパターン知り、9周目の確定回までに回避策を見つけなければならない。Aが犯人ならばAの行動を見張り祖父に近づけないようにする。しかし殺される。ならばAとBを見張っておく。しかしまた殺される。またまた殺される。またまたまた殺される。

基本的には親戚及びその他の人間の行動は前周と同じなので主人公は周ごとに話しかける人を変える事で前の周では知りえなかった情報を収集する。それにより1周目では知りえなかった情報を得る事ができて次の周に生かす。「繰り返し」を生かしつつ、どの様に祖父の死を回避されるのか正解の分からないパターンを試しながら解決に向かわなければならない展開に「あと数回しかループできないのにどうするんだ!」とハラハラする。

 

『七回死んだ男』が初の西澤保彦の作品となりました。元々「腕貫探偵」「ぬいぐるみ警部」のカバーが印象的で覚えていた事もあり、『七回死んだ男』もキャラクター性重視の小説と思っていました。しかし読み始めると能力の面白さと人間関係の面白さが前面に出ていました。(このあと『彼女が死んだ夜』を読み始めると徐々にキャラクター造形にも力を入れて行ったのが分かる。)

 

「誰が犯人なんだ?」という推理ではなく、「どうすれば誰も犯人にならず祖父が死なないパターンにハマるんだ!」という論理的なパズル。持っている情報から複数のパターンを試して解決策を探して行く。ここであのセリフをあのアイテムを、といったシミュレーションゲームを味わえる。そして最後には主人公ですら予想がつかなかった仕組みが隠されていて驚いてしまった。