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読書感想など

【小説】サイバー・ショーグン・レボリューション/ピーター・トライアス

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第二次世界大戦にて日独が勝利した世界を舞台にした歴史改変SF。

同じく日本勝利後の世界を描いたフィリップ・K・ディックの「高い城の男」もあるが、USJシリーズではメカと呼ばれる二足歩行ロボットが闊歩している。歴史改変に加え日本のエンタメ(アニメや漫画、ゲーム)をマッシュアップされている。

人物名が日本の名字と名前のため海外小説のハードルの高さである名前を覚えられない問題が解決されているため、とても読みやすい。

シリーズ第一作:ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン

歴史改変となったアメリカが舞台となっており、少しずれた日本文化の描写が笑える部分もありつつ、軍隊の嫌な面が全面に押し出されている。ある意味でステレオタイプな感じでもあるが尖っていて面白かった。ただしメカ要素が薄かった。

シリーズ第二作:メカ・サムライ・エンパイア

一転し、ロボット乗りを目指す少年少女の青春を友情と恋が描かれる。ナチスドイツのメカも登場し、熱い戦いが繰り広げられる。第一作に不足していたメカ要素があふれるくらいに詰め込まれている。

そしてサイバー・ショーグン・レボリューション

シリーズ完結作にふさわしく、一作・二作のいいとこ取りがされている。

時代は飛び、メカの種類や武器が豊富になっている。しかし日本軍そのものは替わっていない。軍のクーデターによって血が流れ、死がそこら中にあふれている。市民を守るべき軍人が市民を巻き込んで革命を起こそうとしている。

新政権樹立のために血を流す軍人達。樹立後に起こるテロの犯人を追うメカパイロットの森川励子と特高の若菜ビショップ。彼らはかつて仲間であった同僚達の行方を追いかけ、多くの死を目の当たりにする。そして突きつけられる日本軍そのものの闇。上からの命令を疑わずに人殺しを実行し、捨て駒のように扱われる兵士達。

主人公側と(主人公から見た)敵。正直こいつらのゴタゴタのせいで市民は死んでいく。

自分を守るためだけに行動をしている彼らは本当に間抜けで愚かしい。上のために動いた結果、関係のないものが死んでいく。どちらも正義ではない。自らの保身のために下の人間を働かせる上官たち。まさに日本的な考えが反映されている。

完結作らしい、スクラップアンドビルドなエンディングは大団円とは行かないまでも落とし込みが良かった。歴史は続くよどこまでも、なので終わりではなくこの先も続いてくことが示唆されている。

簡単な各シリーズと完結作の紹介となったが、シリーズ毎のつながりは緩やかだ。

どこから読んでも問題が無い作りになっているので、世界観に触れたいなら一作目、ライトに読みたい人は第二作をおすすめする。