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読書感想など

『16年ぶりの奏でられた長編』零號琴/飛浩隆

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零號琴。はて、なんて読むのだろうか。

ぜろごうとらきん。れいごうこと。ぜろとらこと。

答えは零號琴(れいごうきん)だ。

 

こんなの読めるか!と怒ることもなく手に取る。なにしろSF小説なのだからしょうがない。タイトルでまず「一体どのような内容なのだろうと」と惹きつける必要がある。

 

では、零號琴とはなにか。一言でいえば曲だ。

特種楽器技芸士のトロムボノクと相棒シェリュバンは惑星〈美縟〉に赴く。そこでは首都全体に配置された古の巨大楽器〈美玉鐘〉の五百年越しの竣工を記念し、全住民参加の假面劇が演じられようとしていた。上演の夜、秘曲〈零號琴〉が暴露する美縟の真実とは? 『グラン・ヴァカンス』以来、16年ぶりの第2長篇

あらすじさんありがとう↑

 

仮面をかぶり伝記の劇を演じる。伝記とは、いうなれば桃太郎やかぐや姫のようなおとぎ話、古事記と思っていただきたい。

ただそれだけなのだが、脚本を手がけた人物が気が狂ったと思われる本を出してきた。

その宇宙で人気を博したアニメフリギアマッシュアップしたのだ。

プリキュアではなく、フリギアだ。)

 

記事冒頭の写真を見ていただきたい。金と黒の重厚なデザインに明朝体のフォント。いかにもハードルが高そうな本に見えると思う。しかし中身は昔ながらというと語弊がありそうだが、12チャンのハチャメチャSFアニメぐらいのノリの軽さ。そこら中にあるパロディの数々はオタクであれば元ネタ探しに夢中になれるだろう。

それくらいライトなものなので構えることなく読んでみてほしい。

 

ただしそこに含まれる物語は軽くない。

すぐにその綺羅びやかな都市の風景に引き込まれ、同時に奇妙と怖さが入り混じった気持ち悪さを感じるだろう。

 

 

美しく、気持ち悪く、謎が巡り、フリギアが舞い、音楽が奏でられる。

 

零號琴

零號琴