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読書感想など

空から女の子が!『真夏の異邦人』/喜多喜久

 

真夏の異邦人 超常現象研究会のフィールドワーク (集英社文庫)
 

 

あらすじ

大学のオカルト研究サークル<超常現象研究部>に所属する星原純平は夏休みを利用して故郷の村を訪れていた。目的は里帰りではなく、動物の不信死の噂を聞いた先輩3人のガイド役として連れて来られた。動物の死、切り取られた肉片、人間の手首、そして突如空から現れた美しい少女… そして彼らは村で起きた不思議な事件の真相に迫る。
 
物語の冒頭からいきなり主人公の星原が少女と出会う。
その出会いは唐突でいささか性急すぎる印象がある。星原は真夜中に空を飛ぶ謎の飛行物体を目撃した。落下地点に到着すると棺のような飛行物体を迷いながらも触ってみると蓋が開いた。中には金髪、白肌、長い睫毛、長身でレオタードの美少女が入っていた。ここまで25頁だ。

 

連れて帰ってみるものの日本語はおろか英語もその他の言語も通じない。どこの出身かも分からない。宇宙人(と思われる人物)とのファーストコンタクト、ボーイミーツものとしてはベッタベタの展開である意味安心してしまう。
 

登場人物

登場人物は一人一人特徴的で口調もそれぞれ違い、キャラクター性が強い。オカルト研究サークルだが、全員が宇宙人に興味があるわけではなく、心霊、超能力者にも興味がある。しかし主人公の星原は過去のトラウマからオカルトに拒否感を持っており、半ば強引にサークルに参加させられた。
 
そんな彼が謎の飛行物体から現れた美少女(のちにユーナと名付けられる)に出会ってしまった。
謎の飛行物体など目の前で起こっていることに無理やり目を背け、彼女の怪しげな行動に協力しつつ、オカルトを拒否するという矛盾を抱えている。
 

オカルトと現実 / 事件の謎と彼女の謎

本書には複数の謎がする。それらがどの様に繋がっていくのかが肝となっている。
 
謎1:動物の肉を一部を切り取られる「キャトルミューティレーション」と思われるオカルト的な話
謎2:人間の手首が見つかるという現実的な話。
 
動物の死と人間の手首、その二つには繋がりがあると調査を進める研究会のメンバー。
2つの事件のつながりは何なのか? というストーリーに加え、「UFO・宇宙人・キャトルミューティレーション」といったキーワードにどうしても期待してしまう。
 
謎3:ユーナ
空き缶やそこらへんに転がっている石を集めていたり、傷がすぐに治ったり謎めいた行動をとる。
言葉が分からないので教えていくうちに段々と覚えてきて「オハヨウ、ゴザイマス」と片言で話せるようになる。ベタベタである。隙もないくらいベタである。日本人離れした顔立ちに白肌金髪の美少女が「オハヨウ、ゴザイマス」なんてベタのスタンダードだ。きんいろモザイクだ。
台詞の拙さに加え、toi8さんのイラストによって可愛さは相互作用される。
 
事件を調べるうちに星原はユーナが事件の犯人では? と疑いを持つ心と、その魅力に惹かれている自分がいることに気がつく。二人のボーイミーツものとしての側面があるが、あくまで話の中心となるのは「キャトルミューティレーション」事件。
 
ただ、それらがどれも中途半端なので、どっちつかずなまま印象を持ったまま物語は収束してしまう。
 
本巻で完結してしまっているが、どちらかといえば事件そのものより、事件後の方が気になってしまうのがとても惜しい。1巻にいろいろな要素を詰め込み過ぎているので、その一つ一つを掘り下げる様な短編ものや、上下巻などでエピソードを重ねたら相当面白くなったと思われる。