ジャケ買いしてもいいんだよ『私は存在が空気』/中田永一
短編によって能力もキャラクターも変わり、話同士の連続性はないものの単体としてどれも面白みがある。恋愛、暴力、犯罪、コミカル、ハードボイルド、友情、裏切り。話によって含まれるエッセンスが異なり、ガラッと雰囲気を変えてくれるので飽きることない。しかし能力をなぜ使えるのか?などといった解説はふんわりしているのでライトな読み物として肩の力を抜いて読むことができる。
超能力という不可思議な力を持っている登場人物たちは、それをどのように利用するのか。
個人的なことに使う人間もいれば、とても危険な使い方をする人間がいる。
「どのような人間が」「どのような能力を得て」「どのように使う」のか。話を展開するにあたりどこを強調して、どこを抑えるのか難しいところではあるが、一人一人のキャラクターの立て方や動機の作り方が丁寧なのでバランスがとても保てている。主人公たちの行動に驚かせられる点もあり、より物語を推進してくれる。
超能力にライトノベルや漫画のような新鮮さはないものの(そのほとんどに元ネタがある*1)、マイノリティな存在とそれを受け入れてくれる存在。互いが互いを支えることで初めて動き始める物語であり、サスペンスとしての超能力な面もありながら運命的な人との出会いを描いている。
文体は読みやすく、青春ものとして小難しく考える必要がないSF青春小説。構成については説明的な面もあるがおそらくターゲット(10代・20代)に合わせたと思われる。
追記
文体やキャラクター造形などに既視感があると思っていたらO1の別名義ということを知りました。「少年ジャンパー」なんてそのまんまだ。