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読書感想など

世界は壊れ、彼は走る。『カウントダウン・シティ』/ベン H ウィンタース

カウントダウン・シティ

カウントダウン・シティ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

著:ベン H ウィンタース

フィリップ・K・ディック賞受賞作〉小惑星が地球に衝突するまで七十七日。元刑事のパレスは知り合いから失踪した夫を捜してくれと頼まれるが……。『地上最後の刑事』三部作、待望の第二弾!

 

 

前作の「地上最後の刑事」から更に時が進み、惑星衝突まであと三ヶ月となった。主人公のパレス刑事は相変わらず警察に勤めていると思いきや、仕事を辞め(辞めさせられ)犬と一緒に生活を送っていた。

前作の感想↓ 

dazzle223.hatenablog.com

 

世界はますます衰え始め、インフラは絶え、暴力と略奪はそこらじゅうにはびこっているが警察は全く機能しなくなった。世界がどんどんマイナスになっていく。自分のことを第一に考える人間が大多数となり、いつも身包みを剥がされてもおかしくない状況になっている。テレビ、ネット、ラジオ新、新聞、雑誌の情報源は発信されるとこがなくなり外からの情報を得ることができない。
 
当然食料も水の確保が難しくなっていくのでレストランのメニューも日に日に少なくなってくる。(そもそもそんな状況でも営業してること自体が驚きだ。)
 
情報源の分断や食料の確保以外にも、惑星の落下位置の周辺国の国民が自身の生命を守るため、海を渡りアメリカ大陸へ上陸し、難民化している。
 
そんなさなか主人公のパレスは恩人の頼みで人探しを始める。前作以上に「なぜそんなことするのか」とつっこまざる得ない。そうじゃないと話が進まないのは分かるが、刑事でも軽猿でもない。言ってしまえば無職だ。報酬を期待するわけでもなく、得にもならない。危険な目にしか会わないのみ行動をするパレスは、今回の人探し以上に彼の動機が気になってしょうがない。彼自身がシリーズの一番の謎だ。
 
前作では寄り道としか思えなかった妹とのエピソードだが、彼女との絡みが重要度が増してきた。
大きな事件や事故があると必ずと言っていいほど「強力な権力を持つ者が。。。」「印象操作によって。。。」など陰謀論を主張する者がいるが、パレスの妹及び仲間たちは陰謀論を信じて行動している。(実は惑星を壊すことができる兵器があるが、人口を減らすためにあえて使わずにいる等)パレス自身はそれを信じておらず、妹には冷淡な対応をする。しかし今すぐにでも妹をそんな仲間から引き離し自宅へ連れて行くたいパレス。
幼き日に妹を守ると約束したのにもかかわらず、世界を破滅に進んでいるのに守るべき人は自分の元を去っていく。
 
物語の中心となる失踪人の捜索。とはいえ、手がかりはほとんどないので、失踪人の職場や親しい人物や前職で関わった人物など次々と聞き込みを繰り返していく。わずかな手がかりをみつけ、また足を運ぶ。やがて街を離れ、別の街へ行き、またヒントを得て、また移動する。といったように捜査方法がどんどんローカルになっている。読んでいると何かに似ているなーと思ったら、RPGのおつかいイベントだ。
 
とても面白かったので続編の翻訳を待つ。どのように幕を閉じるのか楽しみだ。