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読書感想など

Au オードリー・タン 天才IT相7つの顔/アイリス・チュウ 鄭仲嵐

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台湾のIT大臣オードリー・タンと聞けば記憶に新しい人も多いはず。

しかし彼女がどの様な経緯で大臣になったのか知る人は少ないだろう。

◆マスコットとしてのオードリー・タン

ネットユーザーの一人が「タンさんを見た」と書き込めば、「神様降臨」「宝くじを買え」とほかのユーザーが返信する。

またネットで彼女に関する意見をかけば、本人から返信が来る。

それが好意的な意見でも攻撃的な意見でも隔てない。

たとえば、「あの髪型は時代遅れだ」とネットユーザーが書き込めば、「行く時間が無くて来週行ってきますね」と返信を書き込んでくれる。

ネットユーザーが喜んでくれるならばと、彼女は自身をマスコットと呼ぶ。

しかし多くの天才がそうであったようにオードリー・タンも苦痛の多い幼少期を過ごした。

同学年以上の知識やIQがありながら、その性格がたたり同級生からターゲットにされてしまう。それは家族の絆さえ砕きかねなかった。

しかし転機は訪れる。台湾でキズを負った彼女はドイツの教育を通じて回復にいたり、ついには「台湾の教育を変えたい」と思い立つ。

その後のオードリー・タンの代名詞とも呼べるプログラムやメンター達の出会い。

そして台湾のIT大臣に抜擢された経緯などの詳しくは本書を読んでもらえればと思うが、彼女ははじめからそうであったわけではなく、多くのキズを負った人間の一人である。

本書は彼女の幼少期から現代までに至る天才と呼ばれるが故の苦しみ、痛み、そして脱却し自身の名前にも含まれる鳳のごとく飛び立つ姿を描いた一冊である。

◆付録  台湾 新型コロナウイルス対策

付録として台湾のコロナウイルス対策が収録されているのだが、これが泣けてしまう。

中国にてコロナウイルスらしき物が発生したと聞いた台湾は初動から徹底した対策を取った。まだ日本でも半信半疑で多くの情報も無く、日本でははやらないだろう、とどこか楽観視していた時期であっても、中国もWHOも信用せず自身の国を守るために動き始めてた。

そのため、海外から帰国した人を14日間は隔離して様子を見る。自宅待機を命じられたにもかかわらず外出したり、連絡が取れない人には容赦なく罰金を命じる。感染が確認できたら感染経路を徹底して洗い出す。

その中には、専業主婦だという女性が体調不良を訴えクリニックを受診した。調べを進めていくと怪しい点が浮かび上がった。彼女の携帯の履歴、位置情報から平凡な主婦がキャバクラでアルバイトしていることを突き止め、その職場にて接触した人、その家族、タクシー運転手まで調べ上げた。幸いにも発症者はいなかったが感染経路の確認例として多くしら得れることとなった。

日本に比べると台湾は強行とまで言える程まで徹底として感染者の把握、経路、接触者を調べ上げルのかというと、2003年に台湾はSARSの猛攻を受けてしまい多くの人を失ったからだ。国際組織から排除されていた台湾はWHOからの支援は一切されず、医療レベルは高かったものの専門職が少なかった。

そのため医療従事者をはじめ一般市民への感染者が爆発的に増えてしまった。

SARSを経験した台湾は二度と同じ轍を踏まないために、その苦しみや悲しみ犠牲者の無念を晴らすかのように今回のコロナウイルス対策を講じた。

マスク不足をどの様に解消したかなど、マスクマップだけではなく、マスク生産者にもスポットを当てた話など語るべき事は多くあるのだがこの辺にしておく。

本編に対してこの付録は短いが、それを食ってしまうくらいあついものがある。

ニューヨーク市のコロナ対策をまとめた冊子があるが、同じように台湾におけるコロナ対策のまとめ本を発刊してほしいと思っている。

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